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公益法人協会エグゼクティブセミナーの再開に期待する

(公財)統計情報研究開発センター理事、城西国際大学前教授 高宮 洋一

私が公益事業団体の業務を担う一員として民間公益セクター事業界に足を踏み入れたのは、 2007年のことでした。 それまでは一般民間企業に勤務しており公益セクターには縁がなかったため、 公益助成財団の運営を任され仕事を始めた時にはそうした分野について ほとんどこれといった知識も経験もないNew Comerでした。

事業マネジメントの把握の仕方には色々方法がありますが、一法に二面で捉える見方があります。 「自組織の日常実務遂行上」の視点と、「自組織・セクター全体の中長期的事業経営上」の視点の二面です。 日常実務遂行上での課題は喫緊の課題で、着任時点から対処も待ったなしです。 一方、自組織・セクター全体の事業継続・発展に関わる経営課題はその問題点の把握、 また対応にも時間のかかる、難しく息の長い課題です。 一般にNew Comerは、先ずマネジメントの当面課題である「日常実務の習得・対処」に努める一方、 もう一面の重要事項である、「自組織・セクターが経営レベルで直面している、事業上での重要課題は何か?」 また「その解決に向けて自組織・セクターがどのように取り組み、今、具体的に何が求められているのか?」 といった事共について把握に取り組みます。 しかし公益セクターに関しての、「自組織・セクター全体の中長期的事業経営上の課題」については、 関係書籍等はあるものの、専門性高くなかなか難解です。 当面の課題対処で多忙な中、独力で問題点や情報を収集して課題を把握し自らの問題意識を確立することは難しく、 私の場合もそうしたことについての不透明感に戸惑ったことを思い出します。

我々民間公益セクターの経営は蛸壺経営と揶揄されることがあります。 そのような揶揄は、セクター構成団体の多くが、セクター全体や同事業・隣接事業団体との情報交流や、 事業体同士の連携も少ない独立自尊経営で、相乗効果が期待できる事業連携の事例も少なく、 日常業務は従来踏襲で日々業務が過ぎゆくといった状況の由来です。 本来極めて重要である、自らの事業に大きな影響を与える行政や政治絡みでの重要課題の存在や それらの検討改定推移も十分に把握できにくく、各団体組織が分断された独力独歩であるが故に、 その課題解決への対処についても具体的対応に行き悩む状況からです。

日々の事業業務は極めて重要で、そのより良き遂行に力を注ぐことは勿論本来業務です。 その一方、上記で、もう一面として記した自組織・セクター全体の中長期的事業経営上の課題について、 それをしっかりと把握してその改善解決に向けて働きかけることも、「自組織・セクターの健全な発展」 ひいては「国民の公益向上」に繋がる、同列に重要な事項と言えます。

私が2007年に本セクターの一員として公益セクターに足を踏み入れた際に、蛸壺経営とも言えるような 自らをめぐる事業環境の中で、重要経営課題について一定の問題意識を持つことができたのは、 公益法人協会の「エグゼクティブセミナー」での公益セクターを巡る重要課題とそれへの対応といった 内容の講義や、同席した多くの参加メンバーからの優れた事業経営実例譚披歴、そして現在まで続く セミナー参加畏兄諸氏との人脈ネットワーク構築の経験でした。

どの産業とも同様に、我々の公益セクターでも人材は常に代謝しており、フレッシュで意欲的な人材は 常に新たに注入されてきています。 それら人材が広い視野での問題意識と相互交流・連帯感を持ち、公益セクターを積極的にリードして 「公益セクター全体の健全な発展を推進して国民の公益増大につなげる」幅広い活動ができるように、 New Comerの皆さんに積極的にアプローチして、問題意識を喚起し連帯を確立するサポートをするのも、 中間支援組織である公法協の重要な役割でしょう。

社会のあらゆる行事は数年来のコロナ病禍で停止し、ここにきてようやく再開が急となっています。 公法協エグゼクティブセミナーも、同様のインターバル期にあり再開が期待されます。

一般的に行事開催では、「魅力ある内容」と、「募集活動のあり方」が結果としての参加者の 多寡につながり、それが同行事の成功に繋がる重要な要素です。 New Comerエグゼクティブの「ニーズに沿った」、エグゼクティブの「問題意識を喚起できる、 簡潔で分かりやすく充実した内容」のセミナーを企画し、一方それに参加することが 「有意義な新たな人的ネットワーク形成」につながるような、セクターの将来を担う 参加人材を広く多く集めうるか? エグゼクティブセミナーの存在意義の重要性に鑑みると、十分に検討された充実した企画での 公法協セミナーの再開が強く期待される所です。



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