協会について 公益法人協会について

変容・多様化する社会における公益法人

新年度のご挨拶を申し上げます。

(1)コロナ禍とWHO(世界保健機関)

 昨年は2年前から発生した新型コロナウイルスが、終結を見ないまま、社会・経済・文化活動・スポーツ等に大きな影響をもたらし、民間非営利公益活動への影響も大きなものがある。
 新型コロナウイルスは、デルタ株、オミクロン株、このところはステルスオミクロン株(BA2)、さらには新種のデルタクロン株がフランスやデンマーク、ブラジルで発見されている。この病原菌は次々と変異を遂げ、人間に襲い掛かっている。ワクチンの複数回接種、特効薬の開発などにより鎮静化が期待されるが、なかなか終息できず、人々の間では、もう元の状態には戻れないというあきらめ感と、今後はコロナとの共生を模索していかなければならないという厭世感が漂っている。
 我が国の状況をみると、毎日発表される陽性者数や死亡者数は、前の週に比べ少しずつ減少しているようには見えるが、外出者が増えると増加傾向になり、予断を許さない。何回目かのまん延防止等重点措置は解除されたとはいえ、パンデミック状態にあるのは事実である。リモートワークという新しい働き方が浸透してきてはいるが、新型コロナウイルスの影響は、全地球規模で解決しなければならない問題を含んでおり、国際機関のWHOは当初からの対応が遅れて感染症を報告するグローバルなネットワークの整備、PCRなどの検査システム、ワクチンの製造や抗ウイルス薬、特効薬の開発など迅速な国際協調は取れているとは言えない。

(2)ロシアのウクライナ侵攻と国際連合安全保障理事会・国際司法裁判所

 そうした中、ロシアのウクライナ侵攻が2022年2月24日に起こり、この状態は、明らかに国際法違反である。国際司法裁判所は、ロシアに軍事行動を即時停止するよう仮保全措置を命令した(2022年3月16日)。この命令では15人の裁判官のうち13人が賛成票を投じ、ロシアと中国の裁判官2人が反対したようである。しかし、国際司法裁判所にはこれを強制する権限はなく、最終的には国連安保理事会で決着をつける仕組みになっている。ロシアは国連安保理事会の常任理事国である。これでは問題の解決にはならない。国際連合のグテレス事務総長は即時停戦を訴え、停戦合意に向けて交渉仲介をすると発表している(2022年3月29日)。
 毎日、民間施設への爆撃のニュースを見て、ウクライナの413万人超が近隣の国に避難をしている様子に心を痛めている私どもにとってどのような支援が行えるのか、どうしたら平和な状態を取り戻せるのか悩ましい限りである。原子力施設への砲撃、生物・化学兵器の使用、原子爆弾の使用など第3次世界大戦にもつながるようなこの問題に大きくかかわってほしい国際連合、特に国連安保理事会の無力さが気にかかる。
 トルコが関与して停戦協議もいろいろ行われているようだが、コロナの問題でもロシアのウクライナ侵攻の問題でも、国際機関の大きな活躍が見られない。時間がかかるかもしれないが、現状に合わせた国際連合全体の改正を進めるべきであろう。今後、経済的支援、避難民の受け入れ、文化交流など、様々な場面で、今まで想定していなかったニーズが我が国の民間非営利公益組織にかかわってくると思われる。
 4月1日のニュースによれば日本政府は、ウクライナからの避難民支援に関し、(公財)アジア福祉教育財団難民事業本部を通して支援を行っていくと発表し、4月2日、林外務大臣をポーランドに派遣し、避難民の状況の把握や協力支援を話し合い、大臣の帰国の政府専用機に避難民を乗せてくる(今のところ20名ほど)との積極的な動きがみられる。

(3)我が国のコロナ禍と公益法人

 翻って、わが国では、3月16日に、11年前と同じような地域で大きな地震が起こった。さらに連日様々な地域で大きな地震が起こっている。コロナ禍、地震、国際紛争と私たちの周りの大きな出来事の中、施行後13年を経過した新たな公益法人制度には、長引くコロナ禍でセミナーの中止、コンサートの中止など事業収入が激減し、公益目的事業実施ないしはそれを拡大するための財政基盤の脆弱さが露呈した。他方、助成型の財団法人では、助成事業の贈呈式などの実開催ができないため、公益目的事業の実施費用が余り、やむなく収支相償が実現できないなど、制度そのものに不合理な足かせがあることが表面化した。
 公益法人協会としては、あらゆる機会をとらえて制度の改正や改善をさらに働きかけていく必要がある。また直近では、内閣府公益認定等委員会に設置されている会計研究会では、正味財産増減計算書から活動計算書への名称変更がなされ、それに伴い財務諸表の内容や様式まで変更される恐れがある。この問題も注視していく必要がある。

(4)公益法人のガバナンス改革
  (学校法人のガバナンス改革の動きと評議員、評議員会の存在意義)

 一昨年12月に「最終とりまとめ」がなされた「公益法人のガバナンスのさらなる強化等に関する有識者会議」については、不祥事対策ばかりに目が向けられていた。
 ガバナンスは、重要であり自立と自律に基づき民による自由な発想で民間非営利公益活動を活性化することは公益認定法1条の趣旨である。多くの公益法人は問題なく発想豊かに公益活動を行っており、このように公益法人自らガバナンス強化を自主的に行うというところに力点を置くことが重要である。
 一方、昨年7月から開催され、本年3月末まで行われた学校法人ガバナンス会議(本年1月より「学校法人制度改革特別委員会」に名称が変更され、検討委員も全面的に変更されている)では、評議員・評議員会の存在意義、権限などに言及し、公益法人制度との比較もなされた。公益法人協会としては、定義、存在意義、権限等の法的根拠が明確でない評議員・評議員会を検討、研究していく必要があると考えている。この検討、研究には学者、実務家など専門家を集め、公益法人協会の調査部を充実させ、海外の公益法人制度と評議員制度の比較研究等も行う予定である。

(5)50周年記念事業

1)シンポジウム
 本年当協会は、創立50周年を迎える(設立1972年10月17日旧主務官庁総理府)。これを記念するシンポジウムの開催趣旨としては、当協会の創立40周年(2012年)以降の10年を振り返り、公益法人をめぐる制度環境や課題、新型コロナウイルスによるパンデミックを経験し、変容・多様化する社会において、公益法人がさらなる活動を行う上で、体力をつけ、成長していくための課題は何なのか。民間公益セクターへの期待と可能性を考えるための機会とする。
 ① タイトル:多様化する社会と公益法人の可能性(仮題)
 ② 開催日時:2022年10月18日(火)13:00開会
 ③ 会  場:日本教育会館一ツ橋ホール(オンライン配信も検討)
2)50年史の編纂
 ただし、40周年史まではあるので、その後の10年史に焦点を置く。
3)記念出版
 公益法人協会設立時に出版された『公益法人の理論と実務』を全面改訂し『公益法人・一般法人の理論と実務』を刊行。

(6)その他本年度の主要事業

1)出版
 例年通り公益法人等の制度理解・実務情報の提供のため『公益法人・一般法人の運営実務(第4版)』『定款・諸規程例(新版)』等の本を積極的に発行していく。
2)国内外非営利組織との連携
 国内連携としては、国内の非営利組織とのネットワーク構築や情報収集を行う。海外連携として、英国のNCVO、米国のIndepend Sectorとの交流、東アジア市民社会フォーラム(日本、中国、韓国)を「市民社会と子供(仮称)」をテーマに本年は日本主催で行う。
3)相談業務・セミナー・機関誌
 ① 相談業務は、公益法人協会の目玉事業に一つである。コロナ対策のため直接面談は控えているが、運営・設立・会計税務の専門家が常置しており、公益法人・一般法人の皆さまのご質問にお答えするためオンライン相談、電話相談をおこなっていく。
 ② セミナーもコロナのため、オンラインと実開催のハイブリット方式や完全オンラインによる開催を行い、遠隔地でのご要望にも沿うようにしていく。内容は会計・税務セミナー、新任役員のための会計・運営・人事労務等のセミナー、立入検査、運営実務等のセミナーなどバラエティーに富んだものとする。
 ③ 機関誌は、毎月発刊し、実務情報、政策提言など必要な情報をいち早く届けることに力を注いでいく。
4)調査研究
 公益法人協会にとって調査研究はすべての事業の根幹となるものである。特に2018年に組織した民間法制・税制調査会(当協会、(公財)さわやか福祉財団、(公財)助成財団センター)では、制度にかかる問題点を整理し、検討し、必要な場合は、運動体として提言を行ってきた。
 本年度のテーマは、①学校法人ガバナンス改革の動向と評議員制度、②純資産規制による財団法人の強制解散制度、③基金制度の実態と活用並びにその問題点等である。さらには、コロナで実施が遅れている米国の小規模公益法人の実態を研究する訪米ミッションを9月に派遣する予定である。
 また昨年度の後半から開始した「ESG投資研究会」は、公益法人の資産運用についてESGに配慮した運用の基本的な問題点の検討を毎月行い、現在は、具体的な問題をさらに深掘りするためにワーキンググループを組成し、実務に特化した研究を集中して行う予定である。

(7)終わりに(政策提言に向けて)

 公益法人協会は、1,400以上の会員に支えられた民間非営利公益組織唯一の中間支援団体である。その主要な事業は、前述したようにセミナーの実施、相談業務、機関誌の発行、各種専門分野の出版物等の提供、調査研究のほか、特筆すべき事業に政策提言事業がある。
 2018年に設置された民間法制税制調査会で、公益法人制度にかかる問題点を整理し、2018年12月のシンポジウムで、当協会、(公財)さわやか福祉財団、(公財)助成センターの三者名で提出された大会宣言(財務三基準の是正、変更手続きの簡素化、情報開示の拡大)の実現を今後も強力に推進していく。
 公益法人協会は、民間非営利公益組織が、より自由に、積極的に活動できるよう様々な角度からサポートし、「信頼され親しまれる協会」として、会員の皆様のご意見やご要望にも真摯に耳を傾け、今まで以上に調査研究部門を強化し、専門的な研究を充実するシンクタンク的機能を発揮し、公正妥当な政策提言を引き続き実行して行く所存である。
 ご支援のほどよろしくお願いいたします。

公益財団法人 公益法人協会
理事長 雨宮 孝子