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ガバナンス偏重への疑問

(公財)秋山記念生命科学振興財団 理事長 秋山 孝二
今年6月、以前経営に名を連ねた東証プライム市場上場会社の株主総会に約20年ぶりで出席しました。
コロナ禍で会場の設営は様変わりでしたが、それ以上に事業報告を聞いていて、私の時代に比べて監査委員会設置等をはじめガバナンスに関しての詳細説明に、今を取り巻く企業へのこの種の強い社会的要請に驚きました。
と同時に、率直に言ってこのような仕組みの構築で本当に本来の企業のダイナミックな活動が持続可能なのか大いに疑問でした。

「コンプライアンス(法令遵守)強化のために、コーポレートガバナンス(外部から企業を統治する仕組み)が必要」とは言うものの、時々刻々、激しい環境変化と厳しい競争の中で企業は生き残りを掛けている時代、専任の企業トップたちは24時間緊張状態の日々、非常勤の外部の監視・統治等は、現実的に本当に可能で機能するのだろうか、ただただ総務部門の報告資料作成業務の負担を増やすだけではないのか。

総会後、今を預かる経営陣で私の尊敬する方がしみじみつぶやいていました、「『金融資本主義』の蔓延で、株価の安い時に買い入れ、短期的に高くなると
すぐに売却して当面の利益を得る多数の株主の存在は、本来の資本主義のあるべき姿なのだろうか。企業経営陣と産業を長期的視点で育てる株主と共に歩もうとする『産業資本主義』は、ただの理想になってしまったのか」と。
見てきた経営者としての喜びの姿とは程遠い表情に、現状の負担感が伝わって胸が痛みました。

一方、医療で「インフォームド・コンセント」というフレーズが流行った時に、私自身は闇雲に予め患者に伝えれば良いというものではないだろうと思っていました。
前提としての医師・患者の信頼関係が最も重要なので、高度のコミュニケーション能力が問われるはずであり、形ばかりの「予めの説明と同意」では本来の目的はとても達せられないだろうと。

先日、高校生の保護者から聞いた話、昨今、高校の進路指導では、「進学」、「就職」に加えて、「起業」というカテゴリーが設けられているそうです。
前述したように大企業を取り巻く環境は大変窮屈な状況、それならば、若者は自分のやりたいことを思い通りに貫徹する器としての「小企業」を一から立ち上げて、そのオーナー経営者として地域社会・世界に貢献する道筋があってもよいのではないかと思うと、この試みに私は拍手喝さいです。

昨年のある財団法人向けのフォーラム、来賓としてご挨拶された政府の関連部署の方は、何と「マネーロンダリングに関する注意喚起」でした。
多くの善良な財団関係者は場違いも甚だしい強い違和感を抱いたのではないでしょうか。
敢えてまとめは致しません、今の日本、ビジョンの欠如の前に、現状認識の誤り、それに続く課題設定の誤りを私はこの間痛感しており、基幹産業の埋没の中で新しい産業創生と地域創生の担い手として、イノベーター的存在「公益法人」の果たす役割は大きいと確信している昨今です。


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