協会について 公益セクター

Ⅰ.公益法人に対する税制上の取扱い

公益法人は「新しい公共」を担う最有力な非営利の法人として、税制上手厚い支援措置が設けられています。

まず、法人税については、原則は収益事業課税ですが、その収益事業が公益目的事業と認定されたときは、非課税(収益事業から除外)となることが大きな特徴です。また、みなし寄附金制度の適用、利子・配当等の金融収益非課税も講じられています。

さらに、公益法人に対する寄附金の所得控除と税額控除方式の併用や相続財産を寄附した場合の相続財産からの控除など、寄附税制も従来にくらべて飛躍的に改善されました。

法人に対する税制

1 公益目的事業と認定された収益事業の取扱い

公益法人は、法人税法上の「公益法人等」に該当し、法人税法に規定する物品販売業、金銭貸付業、運送業、請負業など34業種の収益事業を行う場合に限り法人税の納税義務が生じます。

ところが、たとえ法人税法上の収益事業に該当する事業であっても、その事業が公益目的事業と認定されている場合には、法人税は課税されません(法人税法施行令5②一)。
これが公益法人の法人税に係る大きな特徴です。

(参考)
今までに公益認定を受けた事例を見ると、従来の概念では法人税法上の収益事業に該当するものであっても、公益目的事業として認定された事例が数多くあります。 具体的には、学術その他公益に資する出版業、文化、体育、福祉などの事業に関する請負業、芸術に関連する興行業、社会的に有為な資格の検定、認証などの事業(技芸教授業)、緊急医療、僻地医療、健康指導など医療・検診事業(医療保健業)等が公益目的事業として認定された結果、法人税法上非課税所得となっている事例があります。

なお、公益目的事業と認定されない収益事業の、2012年4月1日以後開始する事業年度から適用される税率は、普通法人同様25.5%(800万円以下の部分は15%)(*)の法人税が課税され、従前のような軽減税率はありません。

(*) 2012年4月1日から3年間は、復興特別法人税分が加算されます。

2 みなし寄附金制度

公益法人の収益事業に属する資産のうち、その収益事業以外の事業で公益目的事業に該当するもののために支出した金額は、収益事業に係る寄附金の額とみなして、一定の金額の範囲内で損金算入が認められています(法人税法66、租税特別措置法42の3の2)。

この一定の金額とは「所得の金額の50%相当額」と「公益法人特別限度額」のうち、いずれか多い金額とされています。

この「公益法人特別限度額」は、みなし寄附金の額と公益目的事業実施必要額(当期の公益目的事業に係る費用の額から当期の公益目的事業に係る収入の額を控除した金額)のうち、いずれか少ない金額をいいます。

つまり、公益認定法上収益事業等の利益の50%は、必ず公益目的事業に支出しなければならないので、最低その額は損金算入を認め、それでも赤字の場合は収支が均衡する金額まで(もちろん、最高は100%です。)損金算入を認めるというものです。

3 金融収益非課税

公益法人については、所得税法上の公共法人等に該当しますので、支払を受ける一定の利子・配当等にかかわる源泉徴収所得税は非課税です(所得税法11①)。

公益法人に対する寄附者の税制

1 法人が寄附する場合

公益法人は、法人税法上の特定公益増進法人に該当していますので、一般寄附金の損金算入限度額に加えて特別の限度額が設けられています。
株式会社等出資のある法人が寄附者の場合の限度額は、次のとおりです。

【一般寄附金限度額】
{(資本金等の額×その事業年度の月数÷12)×0.25%+所得金額×2.5%}×1/4
【特定公益増進法人に対する寄附金限度額】
{(資本金等の額×その事業年度の月数÷12)×0.375%+所得金額×6.25%}×1/2

なお、公益法人その他公益を目的とする事業を行う法人に対する寄附金で財務大臣が指定したものについては「指定寄附金」(法人税法37③二)として、寄附金全額の損金算入が認められています。

2 個人が寄附する場合

公益法人は法人税法上の特定公益増進法人に該当しますので、個人が公益法人に寄附した場合、基本的には下記Aの所得控除が受けられます(所得税78①)。ただし、寄附先の公益法人が、所轄行政庁から税額控除証明を取得している場合は、下記Bの税額控除とAの所得控除のいずれかを選択することができます(租税特別措置法41の18の3)。
所得税率の極めて高い高額所得者を除き、一般的には、税額控除を選択したほうが、寄附者にとって有利です。

 A 寄附金の所得控除
個人が公益法人に寄附した場合、その年中の寄附金(その年分の総所得金額等の合計額の40%相当額を限度)から2,000円を控除した金額を所得金額から控除することができます。

 B 寄附金の税額控除
個人が一定の条件を充足した公益法人に寄附した場合、その年中の寄附金(その年分の総所得金額等の合計額の40%相当額を限度)から2,000円を控除した金額の40%相当額を、その年分の所得税の額からその年分の所得税の25%相当額を限度として控除されます。
一定の条件を充足した公益法人とは、実績判定期間(直近に終了した事業年度を含む5事業年度*)において、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

* 税額控除可能な公益法人の要件
【要件1】
1年間に3,000円以上寄付した個人、法人が実績判定期間の各年平均で100人以上いること。
【要件2】
年間収入に占める寄附金等収入の比率が5分の1以上であること。

この要件は、基本的に特定非営利活動法人が認定を取得するための8基準のうち1号基準であるパブリック・サポート・テストと同じ計算方法です。
なお、この要件を充足しているかどうかは、公益認定をした行政庁が判定し、充足している場合には、税額控除に係る証明書を発行してくれます。
その申請手続き等の詳細については、国・都道府県公式公益法人行政総合サイト「公益法人information」を参照してください。

* 平成23年度~25年度における申請については2事業年度とすることができます。また、設立後日の浅い法人で5年間の事業活動期間に満たない法人は、設立の日から直近に終了した事業年度の終了日までの間で判定されます。

3 相続財産を寄付した場合

相続または遺贈により財産を取得した者(相続人等)が、その取得した財産を公益法人に寄附した場合、その贈与者又はその親族等の相続税または贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合を除き、その贈与した財産の価格には相続税または贈与税が課税されません(租税特別措置法70①⑩)。

4 有価証券等実物資産を譲渡した場合

公益法人については、所得税法上の公共法一方、生前に株式など有価証券、土地・建物など不動産や特許権・著作権など無体財産権を公益法人に寄附し、社会のために役立てたいと考える人も増えてきていますが、原則的にはその財産の時価が取得価格を上回っている場合には、その差額(いわば値上がり益)は税法上譲渡者が取得したものとみなして、譲渡所得税(みなし譲渡所得税)が課せられます(所得税法59)。人等に該当しますので、支払を受ける一定の利子・配当等にかかわる源泉徴収所得税は非課税です(所得税法11①)。

しかし、公益法人等に贈与した場合は、一定の条件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けることにより、みなし譲渡所得税が非課税となる措置が講じられています(租税特別措置法40①)。
上記3の相続税非課税と異なり、この非課税措置は、公益法人であるということにより自動的に認められるものではなく、個別に寄附を受けた公益法人が、国税庁長官に申請し、承認を受けることが必要となりますので注意してください。

5 地方住民税

都道府県・市区町村が条例で指定する公益法人に対する寄附金(総所得金額等の30%を限度)のうち2,000円を超える金額の4%(都道府県民税)、6%(市町村・区民税)が、その年分の住民税から税額控除されます(都道府県と市区町村双方が指定した寄付金の場合は10%となります)(地方税法37の2・314の7)。

現在多くの都道府県では、当該都道府県において主たる事務所を置く公益法人については、包括的に税額控除の対象とする条例を制定しているようですが、市町村・特別区については条例指定をしていないところもあり、寄附者の地方税の取扱いについては各地方自治体に確認する必要があります。

Ⅱ.一般法人に対する税制上の取扱い

一般法人の区分

税制上、一般法人は「非営利徹底型」、「共益型」、「普通法人型」の3つに区分されます。
これらの取扱いを受けるための税制上の要件は次の通りです。
定款作成にあたって留意すべき点もありますので注意してください。

1 非営利徹底型

「非営利性が徹底された法人(非営利徹底型)」とは、その行う事業により利益を得ることまたはその得た利益を分配することを目的としない法人であって、その事業を運営するための組織が適正であるものとして、次のすべての要件に該当する一般法人をいいます(法人税法2九の二イ、同法施行令3①)。

  1. ①その定款に剰余金の分配を行わない旨の規定があること
  2. ②その定款に解散した時はその残余財産を、国、地方公共団体または次の法人に帰属する旨の規定があること
    1. イ 公益社団法人・公益財団法人
    2. ロ 公益認定法第5条17号イからトまでに掲げる法人(*)
  3. ③①または②の定款の定めに反する行為を行うことを決定し、または行ったことがないこと
  4. ④各理事(清算人を含む)について、当該理事および当該理事の配偶者または三親等以内の親族その他の当該理事と特殊の関係のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、3分の1以下であること

2 共益型

「共益的活動を目的とする法人(共益型)」とは、その会員から受け入れる会費により当該会員に共通する利益を図るための事業を行う法人であって、その事業を運営するための組織が適正であるものとして、次のすべての要件に該当する一般法人をいいます(法人税法2九の二ロ、同法施行令3②)。

  1. ①その会員の相互の支援、交流、連絡その他の当該会員に共通する利益を図る活動をその主たる目的としていること
  2. ②その定款にその会員が会費として負担すべき金銭の額の定め又は当該金銭の額を社員総会もしくは評議員会の決議により定める旨の規定があること
  3. ③その主たる事業として収益事業を行っていないこと
  4. ④その定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を受ける権利を与える旨の定めがないこと
  5. ⑤その定款に、解散したときは、その残余財産が特定の個人または団体(国・地方公共団体、公益社団法人・公益財団法人もしくは公益認定法第5条17号イからトまでに掲げる法人(*)またはその目的と類似の目的を有する他の一般社団法人・一般財団法人を除く。)に帰属する旨の定めがないこと
  6. ⑥特定の個人又は団体に剰余金の分配その他の方法により特別の利益を与えることを決定し、または与えたことがないこと
  7. ⑦各理事(精算人を含む)について、当該理事及び当該理事の配偶者または三親等以内の親族その他の当該理事と特殊の関係のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、3分の1以下であること

(*)公益認定法第5条17号イからトまでに掲げる法人

  1. イ 私立学校法人
  2. ロ 社会福祉法人
  3. ハ 更生保護法人
  4. ニ 独立行政法人
  5. ホ 国立大学法人又は大学共同利用機関法人
  6. ヘ 地方独立行政法人
  7. ト その他イからヘに準ずる法人として政令で定める法人
    (政令で、公益目的事業を行うことのほか、非営利性についてのいくつかの要件が定められています)

税制上の取扱い

一般法人は、登記だけで法人が設立できる準則主義が取られており、またその目的事業の範囲にも制約がないことから基本的には普通法人と同様の税制が適用されますが、各事業年度の収益だけでなく、残余財産の分配についても構成員(社員)や関係者に分配できないことが明白であり、その組織運営等が一定の基準が満たされているものについては、収益事業のみ法人税課税(収益事業課税)という措置が取られています。

1 法人に対する課税関係

上記のような考え方から、「非営利徹底型」一般法人及び「共益型」一般法人(以下、総称して「非営利型一般法人」)については、収益事業から生じた所得のみ法人税の課税対象となります。

収益事業とは、「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるもの」を指し(法人税法2十三)、政令で34の業種が指定されています(法人税法施行令5)。

したがって、会費、寄附金等については、仮に事業年度において剰余(利益)が生じても、法人税は非課税ということになります。

なお、非営利型一般法人であっても、公益法人や認定特定非営利活動法人に認められている「みなし寄附金の制度」の適用はありません。
また、利子・配当等の金融収益についても所得税が源泉徴収されます。

他方、非営利型一般法人でない一般法人については、税法上「普通法人」とされ、全所得課税となります。

* 非営利型一般法人でない一般法人か公益法人または非営利型一般法人に該当する場合や、公益法人または非営利型一般法人が非営利型一般法人以外の法人に該当することとなった場合には、所得計算に際し、所得の調整を行うこととされています(法人税法10の3、64の4)。

2 寄附者の税制

一般法人に対する寄附者側の税制については、公益法人や認定特定非営利活動法人への寄付について認められている支援措置は、基本的にはありません。

(注)  当協会理事長・太田達男著『非営利法人設立・運営ガイドブック -社会貢献を志す人たちへ-』
第2章5、第4章6をもとに作成。
本書の詳しくは、非営利法人設立・運営ガイドブック-社会貢献を志す人たちへ-

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