産業能率大学経営学部教授 中島 智人
大学では夏休みが終わり、秋学期が始まった。
大学3年生を対象としたインターンシップが、本格化する時期だ。
ここ数年、採用活動で早期選考を実施する企業が増えたこともあり、大学生の就職活動では3年次の夏・秋に参加するインターンシップの重要性がますます高くなってきている。
「インターンシップ」は、一般的に「職業体験」と理解される。
大学生を対象としたキャリア形成支援の取り組みは、現在、「オープン・カンパニー」「キャリア教育」「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」「高度専門型インターンシップ」の4つに類型化されており、これらのうち後者二つが、就業体験や実施期間、対象学年や実施時期などの要件を満たすことによって「インターンシップ」と称して実施することができる、とされる。
これらの取り組みは、あくまで学生のキャリア形成を支援する活動であり採用活動ではない、
というのがタテマエである。
「インターンシップ」に限っていえば、就業体験を伴う一定期間(汎用的能力型インターンシップでは5日間)以上のもの、など要件を満たす必要がある。
しかし、学生が参加するインターンシップの多くは、半日を含む1dayや3daysといった短期間である。
さらに、企業側がインターンシップで得られた評価を含む学生の情報を採用活動に使用できるようになり、人気企業のインターンシップは本番さながらの選考があることから、学生にとってはインターンシップへの参加が採用活動への最初の関門のように受け止められているのが実態である。
このような状況で、学生が、公益法人を含む非営利団体のインターンシップに参加する意義は何か。
それは、学生が多様な価値観に触れることにより長期的な視点で自分の価値や社会における役割を見出すための取り組みであること、ではないだろうか。
企業によるインターンシップは、学生が志望する業界・企業と自分との就職に向けた関係を築く第一歩であり、直線的である。
学生は、企業の事業や仕事、職場環境やそこに働く人たちを理解し、そこに自分を適応させていく。
これに対して非営利団体でのインターンシップでは、学生は、その団体が対処している課題や対象そのものに目を向ける。
団体の職員だけではなく、当事者を含めてその課題を取り巻くさまざまな人たちのものの見方・感じ方に触れる。
非営利団体の課題へのアプローチが、そこにかかわる人の数だけあるように、インターンシップに参加する学生の参加方法も複線的であっていい。
私が勤務する大学の地元・世田谷区でも、「地域インターンシップ世田谷」として地域のさまざまな非営利団体が学生をインターンとして受け入れる取り組みが実施されている。
成果報告会では、毎回、短期間に大きな成長を遂げる学生の姿に驚かされる。
受け入れ団体の活動やそこにかかわるさまざまな人たちとの交流を通して、学生が新しい価値観に出会い、新しい自分の可能性を見出した充実感にあふれる姿が印象的である。
非営利団体のインターンシップでは、直接、受け入れ団体の就職に結びつくことは難しいとしても、その経験は、参加する学生の人生そのものに大きな影響を及ぼす可能性を秘めている。
それは、将来社会のさまざまな立場で、非営利団体や非営利セクターを理解し、支援してくれる人材の育成にもつながる、未来への投資でもある。