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永すぎた春

(公財)公益法人協会 会長 太田 達男

11月30に開催された内閣府の「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議 フォローアップ会合」の資料によって、同会議の最終報告書に沿った公益法人及び公益信託 両制度改革の全体像、国会提出法案の概要、スケジュールなどが示された。

先ず公益法人関係については、かねてから要望の多い英米チャリティにみられるような小規模法人への事務負担軽減措置が考慮されていない、収支相償規律に関連して医療、福祉、芸術などの法人における先行投資に係る債務弁済金のみなし費用扱いなどの課題は残るものの、大きな方向感として従来の制度内容から比べて、市民社会にとって望ましいものと評価したい。

また、特に公益信託法改正案は、1922年公布以来実に100年を超える抜本改革であり大いに歓迎したい。

フォローアップ会合の資料に関する意見は、別途パブリックコメントも募集されているので、そこで私の意見は明らかにするが、ここではここに至るプロセスについて政府当局に猛省を促したいことがある。

ご記憶の方も多いと思うが、公益法人改革3法が成立した2006年、国会の付帯決議に基づいて「政府は、この法律の施行後適当な時期において、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて”必要な措置”を講ずるものとする」との附則が一般法人法及び公益法人認定法(いずれも略称) に規定された。また、同じ2006年成立した(新)信託法は、(旧)信託法には公益信託に係る規定も含まれていたが、同時進行中の公益法人制度改革の趣旨を見極めてからとの理由で、衆参両院において「公益信託制度については、公益法人と社会的に同様の機能を営むものであることにかんがみ、先行して行われた公益法人制度改革の趣旨を踏まえつつ、公益法人制度と整合性のとれた制度とする観点から、遅滞なく、”所要の見直し”を行うこと。」との付帯決議がなされた。(゛ ”は筆者)

実に、この付帯決議や附則が国会で決定してからなんと15年以上経ってからの 「必要な措置」や「所要の見直し」である。

ご承知のように、公益法人における財務基準、特に収支相償については、法施行後間もなく、 公益法人の財務的生存力を奪うものという強い批判や、事業変更手続についてはあまりにも 煩瑣で過剰な手続きを必要とするため、公益法人の本来の特徴の一つである社会環境の変化に迅速に対応できる事業展開を躊躇するなど、多くの公益法人から改正を求める声が噴出していた。

また、公益信託については、受託者が信託会社(信託銀行)に限定され、一般社会には比較的なじみの薄い制度ではあるが、100年前の法律のため旧公益法人同様主務官庁制度における種々の弊害を生み出していることは、専門家から見れば明らかであった。

公益法人協会も、早い時期からこれら問題点の是正を訴えて度々要望書提出、パブリックコメント募集への意見、時には行政庁訪問による直接申し入れなど多様な手段を用いて早急な改正を迫ってきた。

これらの結果、財務3基準については2015年4月、事業変更手続きについては同年3月、FAQにおいて多少緩和するかに見える変更をしているが、実際現場においては従前とほぼ同様の厳しい審査が続いてきた。

そして今回これらについて改正することとなるが、前述の附則や付帯決議から15年を超える長期間、いろいろな弊害がありながら放置されてきたことは、行政の不作為によるもので、その間において多くの公益法人が理不尽な指導を受け苦しんできた事実に反省していただきたい。

15年以上待たされた改革の結果、三島由紀夫の小説『永すぎた春』のように、それでもハッピイエンドに終われば良いが、改正の趣旨を生かすも殺すも現場のお役人だ。現場で審査や、検査など監督の立場におられる担当官の方々には、今回の改革の趣旨に 沿って暖かく柔軟な対応をされるよう期待したい。



永すぎた春 | 公益財団法人 公益法人協会