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会員組織拡充への更なる注力で、「ミッション推力の強化」と「サステナブルな財政基盤確立」へ

(公財)統計情報研究開発センター理事、城西国際大学前教授 高宮 洋一
公益法人協会(以下、公法協)は、千四百数十余の公益事業団体の集合体であり今年10月18日に創立50周年記念式典の開催を迎えようとしている。
同式典シンポジウムでは、公益法人をめぐる制度環境や更なる成長に向けた課題、公益セクターへの期待と可能性が議論されることとなっている。
シンポジウムではそうした議論を通して、公法協の公益活動における今後の期待される役割と抱える課題また将来ビジョン等にも議論が及ぶであろうことを同会参加者として大いに期待している。
総合的な総括議論は同日のシンポジウムに委ねられるが、本稿ではこの機会にその一端として、公益セクターの支援組織である公法協の今日の活動にスポットを当て、それらを分かりやすくレビューし、その上で民間公益事業セクターの更なる発展に向けた公法協の取り組みを将来に亘り継続的に発展・展開して行く上での、体制・組織上の課題について考えてみたい。

日本の経済構造を形作るおおかたの産業には、その業界の構成事業体の経営を支援し、また声を代弁する産業団体が存在し、その夫々が当該産業の振興に重要な役割を担っている。
〇〇協会、〇〇工業会等と名付けられたそうした各種産業団体は、具体的にはどのような役割を求められているのか? 
公法協も民間公益事業セクターに関しての産業団体とも言え、そうした面での役割もより推し進めて行くためには、組織論の観点からは現状に関しどのような課題の解決が必要なのだろうか? 

産業団体の取り組みは、業界全体としての一体的な発展の手助けを進める大局的側面と、個々の会員の事業経営を個別具体的に手助けする局所的側面がある。
公法協の取り組みで言えば、アドボカシーと呼び習わしているセクター課題の改善を政治・行政等に働きかける活動や、一般社会に民間公益事業セクターへのより深い理解を求める広報活動、セクター内外に対する啓蒙活動等、は大局的側面だろう。
一方、各会員からの多方面の個別相談に応じたり、経営に資する情報をセミナーや書籍・情報誌・Net等を通じて各会員に迅速に届ける、また業界職務に新たに携わる会員団体職員の皆さんへの教育の手助け活動等は局所的側面と言えるかもしれない。
別の観点からみると、産業全体の抱える課題のうち産業団体が対処していくべき課題を攻めと守りといった見方で例示することもできる。
公法協の取り組みでみると、攻めは、公益セクターの各事業体がそれぞれのミッションをより的確発展的に果たせるように、事業界レベルの問題について内外に積極的に働きかける事業環境整備の取り組み。
守りの側面の例では、セクターに関わる法改正等の際の与えられる影響の調査研究、必要に応じたそれらへの意見表明・働きかけや、時として可能性が生じるセクター全体へのバイアスのかかった社会的バッシングへの対処等、セクターの代弁者としてのリスクマネジメント対応などがイメージとして挙げられるだろう。

こうした大局的局所的側面、攻めと守りの側面等、全方位への対処が必要であり、当該産業界の中で並立してそれらの課題に取り組むのが公法協はもとより各産業団体に課せられた役割である。

それでは、そうした活動を夫々の団体が的確に果たして行けるためのバックボーンは何であろうか?
それは、当該団体を支えていただく構成会員の皆さんから提供いただく会費による資金的裏付けと、会員の皆さんの意志糾合に由来する結集力、即ち会員の皆さんの支持の数の力である。

昨今の問題山積・混沌を深める社会情勢の中で、民間公益事業セクターが期待されている社会的役割は年々益々増大している。
そうした中、会員の皆さんの支持で運営が進められている公法協は、その財政面に目を向けると近年そして50周年の今日も、展望の厳しい経営状況が引き続いている。
現在十数名体制の役職員は、厳しい人件費環境の中で、会員の皆さんのミッション達成に向け支援団体としての使命を全うすべく日々必死の職務を進めている。

観測の仕方にもよるが、各種に渡る我が国の民間公益事業セクターの団体数は数万、それ以上にも及ぶとも数えられている。
一方、公法協は千四百数十余名の会員数の団体であり、コロナ病禍下の閉塞もあるが、昨今その所属会員数は大きな増減の見られない膠着状況である。

先に記したように、公法協が民間公益事業セクターの発展を継続的に支援するという、そのミッションを的確に果たして行くためには、財政面での安定、そして同セクターおける一層の結集力強化が必要である。
公法協としては体制・組織面での拡大充実に関し、これまでにも増して会員・非会員を問わずセクターの仲間と連携を進め、公法協事業への一層の理解を得て、新たな多数の同志と連帯する働きかけを進めること。
民間公益事業セクターの将来に向けた更なる活性化・発展に向けては、公法協の結集力の強化、財政面での経営体制の確立、そのためにはセクターの組織率の増加、会員基盤の拡充への注力が、公法協の将来に向けた極めて大きな課題であると言える。


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