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AIと市民社会

(公財)公益法人協会 専務理事 長沼良行

最近、助成財団関係の方と雑談の折に聞いたところによると、公募助成に対する申請件数が増えているという。なぜか。AI(人工知能)の普及がその一因ではないかと推測しているとのことだった。AIは文書の作成、要約、統計データの分析等を行い、きれいに申請書をまとめるのは得意とするところだろう。そういう意味では申請書提出のハードルはある程度
下がるということはあるかもしれない。今後は、申請者のAI活用をどこまで許容し、どこから開示を求めるかということも必要になるに違いない(もうなっているかもしれない)。

5,6年前までは、「人工知能」というのはまだ空想や映画の世界の話と思っていた。それが今やAIという言葉を聞かない日はないくらいだ。とくにここ2年ほどの開発スピードには
目覚ましいものがある。対話型の生成AI技術が発達し、一気に普及した観がある。AI開発競争は加速しており、「あらゆる作業を自律的にこなし、新しい技術を生み出し、自分たちの
文明も作り出すことができる」というのだ。ほんとかいなと思ってしまうが、イーロン・マスク氏らは、「AIが自律的なロボットを作れる工場を造り、そのロボットが新たな工場やデ
ータセンターを作る構想を語って」いるという。

ITに疎い私も無関心ではいられなくなり、おっとり刀で生成AIの無料版を試してみたところ確かに便利だ。仕事の調べ物から、プライベートな悩みまで懇切丁寧に答えてくれる。とき
どきこれは違うんじゃないかということもあるが、まるでチャットで親切な人と会話しているようにも感じてしまう。依存してしまう人の気持ちもわかるような気がする(ただし、無
料版は回答してくれる回数に制限があり、あまりしつこいと断られます)。

ただ、読者には釈迦に説法になりますが、言ってしまえばAIは、大量のデータを統計処理し、確率の高い解を導き出しているだけだ。質問に対して確率計算を行いもっともらしい文章を作文している(たぶん)。ただし、それは「正しさ」の物差しとは別物の論理で出力されたものだろう。AIはあくまで補助的ツールであり、人知の代わりにはならないだろう(と思い
たい)。

さて当協会も参画している東アジア市民社会フォーラムが、今年は10月29日から31日まで、韓国・ソウルで開催される。テーマは、まさに「AI時代における市民社会の新たな役割と機
会」である。これまでの産業革命以上のインパクトともいわれる今日のAI時代に、市民社会の新たな役割とは、どんなことが語られ、その機会をどうとらえるのか。日中韓での現状と
課題が持ち寄られ、議論がかわされるのか楽しみである。日本からはいまのところ10名ほどが参加予定だが、当日参加ご希望や関心のある方は当協会事務局までお問い合わせいただけ
ればと思う。

※参考文献:朝日新聞2023年8月25日付け朝刊「オピニオン:AIと私たち」、同2026年8月1日付朝刊「オピニオン:AIは人類を滅ぼすか」。