公益財団法人 公益法人協会 常務理事 長沼 良行
公益法人協会の事業の一つとなっている、「東アジア市民社会フォーラム」は、日本・中国・韓国の3か国の相互理解と融和を通して、東アジア地域の平和と繁栄の実現を目指す国際交流フォーラムです。
2009年以降、日・中・韓の市民社会セクターが抱える様々な課題を共有し、解決への道筋を探ることにより、市民社会の発展を目指すべく、毎年各国が持ち回りで開催しています。当協会は協力団体として第1回から参加を続けてきましたが、2016年の第7回フォーラム(東京大会)から、日本側の実行委員会事務局を務めています。
今年で16回目を迎え、日本が開催国となり、11月13日・14日にわたって開催されます。
今回のフォーラムは、日本では初めての地方開催として、三重県伊賀地域(名張市・伊賀市)で行います。
テーマは、「人口減少社会における持続可能な地域コミュニティの形成―新たな担い手と多様な連携が拓く地域の未来―」です。
少子高齢化が急速に進行し、人口変動期を迎えつつあることは、日中韓で共通する社会課題といえます。
韓国政府が人口減少に危機感を抱き、この問題に本格的に取り組む契機となったのは、「地方消滅」が現実味を帯びるようになった2015年頃からといいます。
最近、日本でも「消滅可能性自治体」という言葉を聞くようになりました。
大都市周辺で生活していると実感としてわいてきませんが、自治体が消滅するかもしれないということは、例えば小学校が合併されたり、商店街の店が一つまた一つ減っていったりすると、実感を持って感じることで、地元の人々にとっては深刻な問題です。
それはやがて都市部でも他人事とは言えない現実になるでしょう。
今回のフォーラムでは、現在の人口減少社会の中、市民活動では何が担えるのか、また何をなすべきなのか。
日中韓でそれぞれが抱える地域コミュニティの課題、取り組みを共有し、新たな取り組みを模索し、今後の市民活動の在り方をともに考える機会にしたいと思っています。
現在は、開催地の有志からなる現地実行委員会を組成し、三重県、名張市、伊賀市などの自治体の後援も取り付け、準備を進めているところです。
5月の連休明けには、2日間の行程で、名張市、伊賀市を訪ね、市長訪問、現地実行委員会との打合せ等、開催地の様子を下見してきました。
そこで開催地となる現地の様子を少し紹介したいと思います。
1日目は名張市を回りましたが、名張には、三重県指定史跡となっている「名張藤堂家邸跡」があります。
現在の名張地域は、このお屋敷が礎となり、街が形作られているのだといいます。
名張藤堂家は、藤堂高虎の養子高吉にはじまります。
高吉は、織田信長の重臣丹羽長秀の三男で幼名を仙丸といい、本能寺の変で信長の死後、豊臣秀吉の所望により、弟秀長の養子となった人物です。
後に、当時秀長の家来であった高虎の養子となり、名を高吉と改めました。
来年の大河ドラマは「豊臣兄弟!」なので、ドラマでもどこかで登場するかもしれません。
名張は自然も豊かで、街なかから30分ほど車で走れば、赤目四十八滝があり、原生林の山肌を縫うように4kmにわたって続く渓谷に遊歩道が整備されており、その清流には国の天然記念物・オオサンショウウオも生息しています。
この渓谷内の諸施設の整備、自然保護を担っているのが、赤目四十八滝渓谷保勝会という特定非営利活動法人です。
渓谷内の自然環境を整備、保護することで観光資源として活用し、地域経済の発展にも一役買っているようでした。
2日目には、伊賀市内を回りましたが、フォーラムの会場となるハイトピア伊賀からは、まちの文化と産業の振興拠点のシンボルともいうべき伊賀上野城が見えます。
白亜三層の天守が高台にそびえたち、街なかからも威容を拝むことができます。
この城は、関ヶ原の戦い後、徳川家康の信任が厚かった藤堂高虎の居城となったものです。
大阪城と並び高石垣が特徴で、黒澤明監督の映画『影武者』のロケ地にもなっています。
現在の天守は、昭和初期に地元選出の代議士、川崎克が多くの支援者の協力を得ながら私財を投じるなど、郷里に尽くした篤志家たちによって再建されました。
川崎克は、史跡保存、自然保護にも取り組み、伊賀市ゆかりの松尾芭蕉や伊賀焼の歴史を研究し、作陶や書にも熱意を傾けており、芭蕉顕彰のため、城郭内に聖俳殿も建てています。
この伊賀上野城を所有・管理運営しているのが公益財団法人伊賀文化産業協会とのことでした。
今年は、復興天守閣90年の年で、同財団では様々な記念企画を計画しているようです。
なんだか名所案内みたいになってしまいましたが、フォーラム終了後には、街中を散策、史跡をめぐり、地域コミュニティや、多様な公益活動のありようを見る良い機会にもなればと思います。
日頃都会にいては見過ごしているようなこと、出会いや気づきが待っているかもしれません。
皆様のフォーラムへのご参加を心よりお待ちしています。
※本フォーラムの一般参加者募集は、9月から開始予定です。準備ができ次第、ホームページ等でお知らせします。