(特活)「環境・持続社会」研究センター代表理事、國學院大學客員教授 古沢 広祐
近年の人類の繁栄ぶりは驚くばかりです。
前世紀(20世紀)には、人口が約4倍にも急増して他の生物たちを圧倒し(絶滅危機)、ヒトは陸・海・空どころか宇宙に進出(月面到達)しました。
これは人類史のみならず生物史においても画期的な出来事であり、まさしく地球史上で「人新世」(シ゛ンシンセイ)の時代が到来したと呼ばれる理由です。
しかし、21世紀初頭を生きる私たちの世界は、その繁栄ぶりとは裏腹に、その足元が大きく揺れ始めています。
外部的には地球環境の危機(地球温暖化、生物多様性喪失、汚染拡大)の深刻化です。
また人間社会の内部でも、9.11同時多発テロ(2001年)、世界金融危機(2008年)、貧富格差の拡大、新型コロナのパンデミック(世界的感染拡大)、ウクライナ危機、パレスチナ危機、そして米国のトランプ政権の返り咲きなど、深刻な事態が進行中です。
繁栄を極めて「人新世」という地球史的な新時代に突入したかのようなヒトですが、いま三つの難題に直面しているかに見えます。
それは「環境危機」「社会・経済・政治的危機」「存在論(実存)的危機」です。
第一が気候危機や生物多様性の喪失など生存環境の危機です。
第二は、社会編成の矛盾であり、不平等や格差・貧困、人権問題といった社会・経済・政治に内在する対立・分断が深刻化しています。
そして、第三の危機が、近年心配され出している人間存在の空洞化、生きる意味に関する危機的事態です。
すなわち、急速な科学技術の発展による便利さの先行き、人工知能(AI)やロボット、生命操作やバイオテクノロジー等がもたらす行末、人間存在の意味(幸せとは?)に関わる精神的な危機です。
そしてさらに心配なのは、これらの危機が複合化して矛盾の悪循環をおこすような複合危機(ポリクライシス)です。
もしかすると事態は、そうした流れの中にすでに入っているのかもしれません。
他方で、危機であればこそ、矛盾を見極めて問題克服の道を見出すチャンスにもなりえます。
そのためには、目先の個別事象だけに視野を狭めることなく、全体状況を俯瞰しつつ中長期的な視野から事態を見定める総合的な視野(メタ認知)が求められます。
すなわち個別動向に振り回されずに、ダイナミックな動きを多角的に俯瞰することの重要性です。
そこで注目すべきは、時代状況の根底に流れる持続可能性(サステナビリティ)をめざす潮流の存在ではないでしょうか。
具体的には、国連が全会一致で合意した持続可能な世界の実現をめざすSDGs(持続可能な開発目標)の役割が重要であり、もっとクローズアップさせていくべきです。
1992年の地球サミットを契機に、人類は旧来の狭い国益を脱して、新しい地球市民社会の到来という新時代の幕開けを予感しました。
この新時代の幕開けに向けて、私たちはその重要な導き手にSDGsを手にしていることを改めて自覚し、積極的展開をさらに促進していこうではありませんか。