コラム

コラム一覧へもどる

市民活動と寄付集め

(特活)アジア・コミュニティ・センター21代表理事 伊藤道雄

80年代から公益活動の新しい担い手として登場してきた市民や地域住民の志により設立されてきた団体(NGO/NPOとも呼ばれる)にとっては、助成金の獲得や寄付集めは基本的な活動である。
そして90年代から2000年代に入って、これらの団体を支える法制度や税控除制度が整備され、いまではこれらの団体(以下NPO法人)は、その志を追求し実現する条件は与えられていると言える。
しかし、その現実を見ると、多くのNPO法人は、常に逼迫した財政事情を抱え、事業資金は不足している。そのため、常に資金集めに奔走する。

筆者が代表を務める団体では現在、フィリピンのストリートチルドレン支援を行うキャンペーンを行い、現在37万人とも言われる路上で暮らす子どもたちの数を2030年までに“ゼロ”にすることを目標に、フィリピンのNGOや政府関係機関と協力関係を進め、4月12日からクラウドファンディングに取り組んでいる※。
本日(5月14日)現在、5月31日までの目標金額250万円の17%である43万円に留まっている。
筆者が40年以上もアジアを中心とした市民・地域住民支援の募金に取り組んできて相応の結果を出してきたが、このたびの結果はあまりにも少ない。
恐らく、ガザでの戦闘やウクライナへのロシア侵攻が再激化し、犠牲者の数が今なお増え続け、そして国内では能登半島地震で生活基盤を失った人々が支援を必要としている。
他者を思う人々の関心は、そうした人々への緊急性を要する支援に向かっていることが容易に想像される。

数万あるといわれる日本の市民団体を大きく振り分けると、国内の人々を対象に行う団体と海外の貧困者や難民等を支援する国際型団体があり、筆者の団体は後者の部類に入る。
日本国内で困っている人や食事も十分にとれない子どもたちがいるなかで、なぜ海外なのかという疑問を持たれる人たちが大勢いるのはごく自然と思われる。
私たちも、国内の身近な人たちへの配慮をし、共に生きるという姿勢を忘れてはならないと考える。
しかし、現在、あらゆる側面でグローバル化が進み、国籍や言語の違いの壁は、人々の間では低くなっている。
国際的な相互依存性が高まり、海外の人々の存在を無視できないのが現実である。

フィリピン、先のアジア太平洋戦争では当時の日本国家は同国民の110万人にのぼる人命を犠牲に追いやった国であるが、現在では経済関係も順調に進み、若者は英語学校の留学先として選んでいる。
他方、32万人以上(2023年現在)といわれるフィリピン人が、多くは就労者として日本で暮らしている。

不幸なことに、フィリピンの貧富の格差は想像を絶する。
一方で高層ビルのマンションで大きなダブルベッドで睡眠をとる人たちがいて、他方でそのビル群の周りの路上や側溝で身体をエビ状に折り曲げて睡眠をとる子どもたちとその家族がいる。
国は違っても、“人”としてこの状態を許せるのか。
筆者はこの貧富の格差の是正は現地政府の責任にあると考えるが、その政府が十分に機能していないとき、犠牲になるのは常に小さな民そして子どもたち。
国境を越えて市民レベルで立ち上がり、現地政府のみならず日本国政府の海外援助の先導的役割も果たしていきたいと考える。

市民活動、それは一人ひとりの思いを表現する公益活動。
そして民主の社会をつくる公益活動。
国境を超えた子どもたちの自立自助と日本の子どもたちとの将来の共生を目ざす協力活動にご参加いただけることを願っています。

*伊藤道雄氏は、公益法人協会の評議員を長年務められています。

※フィリピンの“ストリートチルドレンZERO”キャンペーン2024開始
 Asian Community Center 21 (ACC21)
 https://www.acc21.org/sczero2024/


市民活動と寄付集め | 公益財団法人 公益法人協会