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2050年へのロードマップを

(公財)秋山記念生命科学振興財団 理事長 秋山 孝二


今年の8月は、新型コロナウイルス感染の蔓延、記録的高温による熱中症、集中豪雨、57年ぶりに1年の延期を経ての東京五輪等、怒涛の日々です。

コロナ禍の1年間、私たちの財団活動は、昨年は交流の場としての贈呈式は中止、今年度助成事業は、採択を正式に決定して淡々と作業を進め、同時に、リアルとリモートの「ハイブリッド贈呈式」開催を検討するほか、運営の振り返りも行う貴重な時間となりました。
特に再確認したのは、国際情勢でパンデミックばかりでなく、2015年「パリ協定」、「SDGs」の採択、「EUサスティナブルファイナンス行動計画」、「タクソノミー」により、数年前から財団の資金運用環境の激変でした。

当財団では、以前から欧州系金融機関との意見交換で、世界の企業経営者の気候変動リスク意識の変化、株主利益の最大化が短期的から中長期的価値の創造へのシフト、経済と環境の枠組み変化等を把握し、3年前に「グリーンボンド」投資を開始しています。

当初は理念先行との批判もあったようですが、現在ではごく当たり前に「ESG投資」、「インパクト評価」といった概念も一般的になっています。
この間、日本の経済団体、金融機関は状況変化を捉えきれず、昨今の政府の「カーボンニュートラル」宣言で目を覚ました感があります。
そして今は、逆に一種のブームのように「SDGs」、「ESG」がマスメディアを賑わしている状況でしょうか。

私はこの間の資金運用の議論の中で、少し傲慢な表現をするなら「日本社会がやっと時代に追いついてきた」と感じるのです。
というのは、EUの考え方の根底には「2050年の脱炭素社会」が明確なゴールとなっていて、国際金融においても、キーワードは「生物多様性」、「サーキュラーエコノミー」、全てのセクターがそこに向けたロードマップを策定できているかどうかが問われています。
言い換えるなら投資の三次元概念、「リスク」、「リターン」、「社会的インパクト」の定着です。

それに対して日本では、「省エネ技術の開発」に矮小化されがちで、「脱炭素社会」への道筋を捉えきれていなかったと思っています。
今日のような時代の到来は、公益事業との親和性により、そもそも「社会的インパクト」を最大価値としてきた市民セクターの重要性は高まり、企業評価の中に、NGOからの批判、社会に悪影響という理由でグリーンボンドの投資「非対象」となる場合も散見され、投資分野においても私たちの存在価値の拡がりが期待されています。
更に、「SDGs」の普及により、地域の課題解決を通してグローバルな連帯に共通語を得ました。

僅かな今月単月の激動の中にも、五輪の運営におけるIOC・組織委員会の数々の課題、各国のパンデミック対応等、グローバルな課題に直面して、これまでのシステム・組織・手法が行き詰まりを見せる中、新しい社会の担い手として、民間公益セクターの地についた活動への期待が高まり、今こそ私たちの出番なのだと思います。