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若い世代の多文化共生

(公財)かめのり財団 常務理事 西田 浩子

例年1月の年初に弊財団では「かめのりフォーラム」を開催し、かめのり賞の表彰式や事業の活動報告を行っております。
今回、昨年10月に就任した新理事長の宮嶋泰子のあいさつで、かめのり財団の根底に流れる「社会から与えられたものを社会に還元せよ」の考え方を、スポーツ報道に携わったアナウンサー時代からの自らの歩みと重ね合わせ、「自分の持てる力は多くの方の支えで得られたものであり、それを社会のために使わなければならない」と考えるようになり、パラリンピックの番組作りやスポーツイベントを通じた国際交流を実現させてきたことから、「若い皆さんには、ぜひご自身の力を蓄えて、それを社会に還元していけるように頑張ってほしい」とエールを送りました。

また、(一財)ダイバーシティ研究所の田村太郎氏による「若者がつくるこれからの多文化共生」のゲストスピーチでは、田村氏が高校卒業後日本を飛び出し世界を旅した異文化体験から、その後国内の外国人とのかかわり、特に阪神・淡路大震災で日本国内の外国人の相談を受けることをきっかけに外国人とともに活動しながら「多文化共生」の推進に携わることになった話がありました。
現在、日本で暮らす外国人の増加、多国籍化、困りごとの多様化の中で、地域での日本語教育や通訳・翻訳にかかわる人材は、これまでボランティア頼りで育成してこなかったことから、その人材不足が現在大きな課題となっています。
すでに他のアジアの国はその国の言葉を外国人に教え、多言語での情報提供を強化し、人を呼び込んでいるのに対し、日本ではその人材が不足しているとのことでした。
これからは多文化共生を支える仕組みを職業として確立することが大切で、多文化共生の推進は「外国人のため」ではなく、「地域の未来のため」行うことであり、「違いを受け入れて外国人も日本人も寛容なまなざしもある地域づくりが必要で、それをぜひ若い人たちの力で実現してもらえるように応援していきたい」という強いメッセージが発信されました。

現在、日本国内だけでなく、ロシアとウクライナの衝突や、地域内の分断による紛争などで多くの国々で、異なる価値観を乗り越えた交流や多文化共生の実現は困難な状況が存在します。
しかし「互いに理解し合い、認め合う」ことから始まる多文化共生は、地域や国や、世界の人々が平和に暮らすためには欠かせないものです。
そして、それを担う人材育成が喫緊の課題です。分断が憎悪の連鎖を生み出すこの緊急事態の中でも、かめのり財団の地道な活動が、若い世代を国や文化を超えて理解し、地球市民の人材育成につながることを願っています。
かめのり財団はささやかながら、今後も力を尽くしていきたいと思います。


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