コラム

コラム一覧へもどる

能登半島地震から1年

公益財団法人 公益法人協会 常務理事 長沼 良行
令和6年1月の能登半島地震から1年が経過した。
当協会では能登半島地震「草の根支援組織応援基金」を立ち上げ、寄付金募集期限の昨年12月末で延べ63件、合計412万円のご寄付をお寄せいただいた。
この場を借りて御礼申し上げます。

昨年11月半ばからは復旧復興に向けた支援活動を行う団体の助成公募を開始し、現在は申請書類も出揃い、2月に実施する選考委員会の準備を行っているところである。

申請をいただいたのはほとんどが地元石川県内の団体で、その支援活動内容を見てみると、「9月の奥能登豪雨で仮設住宅のみならず、集落全体が依然泥にまみれた状態である。汚泥等の清掃活動を通して、せめて茶色く濁る故郷をどうにか明るくしたい」「奥能登を離れた広域避難者同士が集い、交流する場所と機会を提供し、地域住民との交流を促す取組みを行いたい」「珠洲市大谷町は奥能登豪雨後の土砂による被害は現在も続いており、土砂出しの作業が必要となっている。この作業を行うため、ボランティアが当地区にて宿泊できる施設の提供を行いたい」「12月から仮設入居が始まり、それに伴い避難所が解散したため、集まる場所や機会が減ってしまった。災害関連死のリスクを減らすためにも仮設住宅集会場での地域住民との交流会や相談会を開きたい」「子供たちの遊ぶ機会と年齢を問わず気持ちがリフレッシュするような交流の機会づくりを行いたい」などなど、どの申請書からも能登という故郷への温かく、切実な思いが伝わってくる。

奥能登では特に子育て世帯の流出が顕著で、珠洲市内では唯一のショッピングセンターが津波被害で廃業となったため、室内で安心して遊べる場所は体育館くらいだそうである。
小中学校のグラウンドはほぼ仮設住宅となっているため、外遊びができる場所も激減しているという。何人もの友達が地元を離れていくなかで、ここにいて大丈夫なのかなと不安を抱えたまま過ごす子供たちもいる。

そのようの状況の中で、能登にいる子供たちが「ここに残っていてよかった」、能登を離れている子供たち大人たちが「またここに戻ってきたいな」と思える場所にしたい、そういう思いで活動している団体もある。
本基金の助成支援が、少しでも被災された方々が当たり前の日常を取り戻すためのお力になればと思う。

奥能登には昨年9月初めに2泊3日の日程で情報収集のため現地視察を行った。
少ない日程でもいくつか心に残る出会いはあり、その方々が今どうされているかとても気がかりだ。
その時は七尾市の能登島を拠点に輪島、能登町、珠洲を回ったのだが、宿の女将さんから年賀状が届いた。
それには、「多くの暖かな思いをいただき感謝の気持ちいっぱいになった2024年・・・2025年心も新たに前に進めればと思っています」と書かれていた。
このホテルは「島の小さなホテル ウインズ」といって、後で知ったのだが映画『ゆらり』(2017年公開)の舞台ともなったところで、釣り好きのご主人と料理の得意な女将さんと二人で切り盛りしている家族的なペンションである。
奥能登に一日も早く、「平凡な日常」が訪れることを願うばかりである。


能登半島地震から1年 | 公益財団法人 公益法人協会