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対立の時代に考える組織の多様性

公益財団法人 住友財団 常務理事 日野 孝俊
戦争は始めることは容易でも、終わらせることは困難である―――
この趣旨の言葉は多くの軍人や政治家が残しています。
ウクライナ紛争はすでに長期化し、報道に触れる私たちの側にも、どこか慣れが生じているように感じられます。
その一方で、中東では新たな緊張が高まり、事態は容易に収束しそうにありません。
紛争の発端には、相手を受け入れることができないという感情があるのでしょう。
対話では折り合いがつかず、ついには相手を排除しようとする発想に至ってしまう。

自分が当然だと思っていることは、誰もが当然だと思っている、と一般的には思います。
しかし、そうではない、とあらためて驚かされた話がありました。
あるジャーナリストが「ウクライナ紛争で悪い国はどこか」という趣旨の各国の世論調査をまとめてみたそうです。
全世界で統一的に実施された調査はなく、国ごとに時期や方法も異なるため単純な比較はできませんが、傾向は見えてきます。
おそらく日本人であれば「当然ロシアが悪い」と答える方が多いのではないでしょうか。
実際に、その調査では、「ロシアが悪い」とする回答が日本では9割を超えていました。
しかし他の国も同様だろう、と思ったところそうではありませんでした。
「ロシアが悪い」と回答した割合をみると、日本同様に9割を超えていたのはイギリスくらいで、欧米でもドイツでは8割前後、そのほかは6~7割にとどまります。
さらにアジアやアフリカでは、中立、あるいはロシアに比較的好意的な見方も少なくありません。

さて、話はここからいきなり公益法人に飛びます。
令和6年改正公益認定法により、外部理事の導入が原則として義務化されました。
すでに外部理事を導入している法人も多い一方で、これから対応を進めるところも少なくないでしょう。
多様性が重要であることは、あらゆる場面で強調されていますが、外部の人材を受け入れることに抵抗を感じることも少なくないと思います。
組織の事情を十分に知らない人にどこまで任せてよいのか、意思決定がかえって複雑になるのではないか、といった懸念もあるでしょう。
しかし、外部人材の登用は、必ずや法人運営に新たな視点と価値をもたらすはずです。

幸い私が所属する法人では、設立当初より、外部理事を半数以上とするように運営してきました。
外部理事に法人の業務を理解していただくのは手間のかかることかもしれませんが、そこからもたらされるものは、十分にその手間を補って余りあるものだと思っています。
むしろ、内部だけでは見落としがちな前提や慣行を問い直してもらえることにこそ、大きな意味があるように感じます。

皆が同じように考えるのであれば紛争も起こらないはずです。
異なる見方や価値観が存在した上で、それをうまくコントロールできれば組織の活性化に繋がることは、公益法人であっても例外ではありません。
異論を排除するのではなく、違いを前提に対話を重ねることこそが、組織を健全でしなやかなものにしていくのだと思います。